~思い出は心の中に~
私たち、姉妹は昔から、比べられていた。
白羽鳥を受け継いだ姉さんとその妹の私。
まわりの大人達はみんな姉さんの方に構いきり・・・
でも、姉さんは私にも優しく接してくれた。
だから…姉さんが死んだって聞いた時、信じられなかったの…。
本棚から1冊のアルバムを取り出したかえでは懐かしそうにページを開く。
そこにはワンピースに身を包んだ小さなかえでと和服に身を包んだあやめが写っていた。
「ふふっ。」
小さな姉妹は写真の中で優しく微笑んでいる。
「懐かしいわ…。」
枚数は少ないけど、姉妹の絆がそこにはあった。
「かえでさんー!」
「えっ!?」
織姫の声に驚いたかえではアルバムを取り落してしまう。
「あっ、ごめんなさいです。」
「平気よ。で、どうしたの?」
写真を拾い集めるかえでを手伝う織姫は思い出したかのように口を開く。
「あっ、マリアさんがボルシチ作ってくれたでーす!食べに行きましょー!」
「ええ。」
「ねっ、これ、かえでさんですか?」
織姫が差し出した1枚の写真を見たかえでの顔に笑みが浮かぶ。
そこには真新しい軍服に身を包んだかえでと同じような軍服に身を包んだあやめが写っていた。
「そうよ。」
「へぇ!隣の人は誰ですか?かえでさんにそっくりですけど…」
「この人は私の姉さんよ。」
写真を見つめた織姫はアルバムを手に取る。
「他のも見ていいですかー?」
「いいわよ。」
アルバムを見つめる織姫を見たかえでの脳裏に1つの記憶が浮かび上がる。
「かえで!」
トランクを片手にしたかえでを軍服に身を包んだあやめが呼び止める。
「姉さん?」
「きょう出発なんていきなりじゃない!間に合ってよかった。」
「だって、姉さん忙しいって…。」
「・・・これ!」
かえでに包みを差し出したあやめは矢継ぎ早に口を開く。
「薬とか、後色々入ってるから…」
「分かってるわよ、姉さんも心配症ね。」
必死な様子のあやめに吹きだしたかえでは、にこやかな笑みを浮かべる。
「でも、忙しいのにわざわざありがとう。」
「ええ。」
船の汽笛の音があたりに響き渡る。
「そろそろ行くわ。」
「気をつけて。」
「ええ。」
「かえで。」
トランクを持ち上げたかえでをあやめが呼びとめる。
「何?」
「もしも…」
瞳を上げたあやめは意を決したかのように口を開く。
「もしも、わたしに何かあったら、後はよろしくね。」
「何言ってるの?姉さんらしくない。」
顔を上げたあやめは、ぎこちない笑みを浮かべる。
「そうね。行ってらっしゃい。」
「行ってきます。」
船に乗り込んだかえでは港に立つあやめの顔を見る。
「ありがとう。姉さん。」
かえでの胸の中には1つの予感があった。
「姉さんなら平気よね。私の姉さんだもの。」
その予感がのちに当たることになるとはかえでも思ってはいなかっただろう。
「・・・でさん!かえでさんったら!」
織姫の一言にかえではあわてて、我に返る。
「ありがとうです。」
織姫が差し出したアルバムを受け取ったかえでは本棚へと向かう。
「かえでさんとお姉さんってとっても仲が良かったんですねー!」
織姫のその一言に微笑んだかえでは部屋のドアを開ける。
「そうね。」
私の中にあなたの思い出は残っている。
とてもとても大切な…
あやめさん誕生日おめでとう!
疲れたので後書きは明日書きます、ではー。
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